どこか懐かしい潮の香りと、大正・昭和初期を思わせるレトロな洋館の数々。そして、韓国の食通たちが「ここ以上に美味い魚はない」と口を揃える幻の港町があります。
連載第5回目にご紹介するのは、韓国の南西端に位置する美しき港都市、木浦(モッポ)です。
近年、韓国では「ニュートロ(新しいレトロ)」が空前のブームですが、木浦はその聖地とも言える場所。映画やドラマの撮影現場としても引っ張りだこの、ロマンあふれる木浦の魅力をたっぷりとお届けします!
木浦ってどんな街?(人口&規模感)

木浦(モッポ)は、朝鮮半島の南西端、全羅南道(チョルラナムド)に位置する港町です。1897年の開港以来、交易の拠点として栄え、独特のモダンな都市文化が築かれました。
- 人口: 約21.4万人(2026年現在)
- 規模感・アクセス:ソウル駅からKTX(湖南線)の終点まで乗るだけで、乗り換えなしで約2時間30分。終着駅である木浦駅を降りると、すぐにレトロな「近代歴史通り」が広がっており、徒歩とタクシーで主要スポットを1泊2日あればすべて巡りきれる、驚くほど観光のしやすいコンパクトな海街です。
タイムスリップと空中散歩。木浦の「絶対に外せない」名所
木浦観光は「レトロな路地裏の散策」と「圧倒的な海の絶景」という、対照的な2つの体験が楽しめます。
1. 木浦近代歴史館(旧木浦日本領事館) 〜大ヒットドラマの舞台にもなった赤レンガの洋館〜
近代歴史通りにひときわ堂々と佇む、1900年に建てられた赤レンガ造りの美しいルネサンス様式建築。IU主演の大ヒットドラマ『ホテルデルーナ』のロケ地(劇中のミステリアスなホテル外観)として使われたことで一躍有名になりました。
建物の目の前には大きな平和の少女像があり、異国情緒あふれるモダンな姿と歴史の重みを今に伝える、木浦のシンボルロードです。
2. 木浦海上ケーブルカー 〜韓国最長!海と島をまたぐ空中スリルドライブ〜
全長3.23キロ、地上最高高さ155メートルを誇る、韓国で最も長くて高いロープウェイです。
木浦のシンボルである「儒達山(ユダルサン)」の岩肌をかすめるように通り抜け、なんとそのまま海を越えて「高下島(コハド)」へと渡ります。床がガラス張りになったクリスタルキャビンから見下ろす、多島海(タドヘ)のパノラマ絶景と、夕暮れに染まる港の美しさは言葉を失うほどの圧倒的な迫力です。
3. 儒達山(ユダルサン)と彫刻公園 〜港を見下ろす、奇岩怪石の霊山〜
木浦の街のどこからでも見える、ゴツゴツとした奇岩が連なる山。標高は228メートルと低めですが、山頂からの見晴らしは抜群で、木浦の市街地と青い海が一望できます。中腹には整備された美しい散策路があり、彫刻公園や歴史的な石碑を眺めながら、のんびりとハイキングを楽しめます。
グルメ界の頂点!木浦が誇る伝説の「5大味(オデミ)」
全羅南道といえば「韓国で最も食事が美味しい地域」ですが、その中でも木浦は「木浦5大味(オデミ)」と呼ばれる特別な5つのシーフードグルメを定義しています。これを食べずに木浦を去ることはできません!
| 木浦5大味(グルメ) | 特徴と現地での楽しみ方 |
| ① セパルナッチ(細足タコ) | 木浦近海で獲れる、足が非常に細くて柔らかいタコ。箸にぐるぐると巻きつけて、ごま油と塩でそのまま豪快に踊り食いするのが伝統のスタイルです。 |
| ② ホンオフェ(ガンギエイ) | 世界で最も強烈な香り(?)とも言われるエイの辛口発酵食品。木浦の黒山島(フクサンド)産のものが最高級とされます。茹で豚、古漬けのキムチと一緒に「三合(サマプ)」にしてマッコリと合わせるのがツウ。 |
| ③ ミンオ(ニベ・イシモチの仲間) | かつて宮廷料理にも使われた、夏が旬の高級魚。刺身は驚くほどモチモチした食感で、特に湯引きした「皮」や、貴重な「浮き袋」をごま油塩で食べるのが地元民最大の贅沢です。 |
| ④ カルチジョリム(太刀魚の煮付け) | 木浦の秋の名物。丸々と太った銀色に輝く太刀魚を、大根やジャガイモと一緒に、真っ赤なピリ辛ダレでグツグツと煮込んだご飯泥棒メニューです。 |
| ⑤ コッケムチム(ワタリガニの辛口和え) | 新鮮な生ワタリガニの身をほぐし、特製の秘伝赤ダレと絡めた一品。カニの濃厚な甘みとタレの辛さが絶妙で、白いご飯に混ぜてビビンバのようにしてかき込むのが木浦流です。 |
おわりに:ノスタルジックな潮風に吹かれて
木浦は、かつて大きな発展を遂げた時代のロマンが、静かに港の路地に息づいているような街です。
レトロな通りで歴史の足跡をたどり、夕方には海上ケーブルカーから燃えるような夕日を眺め、夜は港の食堂で新鮮なカニやタコに舌鼓を打つ――。ソウルや釜山のような派手さはありませんが、ここには一度行ったら忘れられない、濃厚な「海街のロマン」が詰まっています。
次回の韓国旅行は、KTXの終着駅を目指して、潮風香る木浦へノスタルジックな一人旅や週末旅行に出かけてみませんか?
次回、シリーズ第6回は、科学の最先端都市でありながら、全国から焼き立てパンを求めて人々が殺到する「パンとカルグクスの楽園」、「大田(テジョン)」を大特集します。お楽しみに!

